ドイツ、フランクフルト市の介護保険

 10月27日、フランクフルトの民間介護保険会社TKK(Techniker Kranken Kasse)を訪問した。
 ドイツの介護保険は約20年前から導入の是非が議論され1995年から導入されている。
 ドイツでは民間の保険会社と連邦政府の両方が保険を提供しており、国民はいずれかを選択することができる。
 保険料は収入の1%からスタートしたが現在は1.7%に増額されている。
 現時点でほぼすべての国民が何らかの保険に加入しおり、在宅、老人ホームいずれの場合でも介護の対象となる。
 介護の程度は三段階に分かれており、介護を主体とする方法、現金を支給する方法、そして両者を組み合わせた方法を選択できる。
 現金支給を選択した場合は介護の必要度により1ヶ月あたり、400ドイツマルクから1、300ドイツマルク程度が支給されている。
 現在、ドイツ国内で117万人が在宅で、また43万人が老人ホームで介護の対象となっている。
 介護認定は各都市に設置されたメディカルセンターの医師が行い、認定後も6ヶ月ごとに介護士の訪問を受け、認定の適正の判断を受けなければならない。
 長年の議論の末に導入が決まった制度ではあるが、介護の内容、財源など問題は山積しており現在も議論が続いているようである。
 特に財源については深刻で不足分を地方自治体が負担している関係上、これ以上負担が増え続けると制度そのものが破綻しかねないという危惧がある。
 しかし、日本との根本的な違いはドイツ国民は自立心が強く、あくまでも生活は自分たちで自立して行っていくという考え方が根付いているため、介護保険はあくまでもその生活を支える補助的な役割となっているという印象を持った。
 我が国に導入される介護保険が潤沢に機能することを祈るばかりである。

 

ドイツ、フライブルグ市の環境政策

 10月28日、ドイツ南西部、フランスとスイスの国境近くに位置するフライブルグ市を訪問した。
 この町はドイツでも有数の環境に配慮した町であり、1992年にはドイツ環境援助団体より『自然と環境保全に貢献した連邦都市』の称号が与えられている。
 人口19万人のこの都市は全国に先駆け1986年から環境保全局を設置し、行政全般の広範囲な分野においておよそ考えられる環境保護政策が取られている。
 例を挙げれば、自然保護の観点からは凍結防止剤(塩化カルシウム)や殺虫剤の使用禁止、原野の再生、湖畔の再自然化など人間だけではなく自然の生態系にも配慮した政策が展開されている。
 交通問題ではパークアンドライド方式の導入で市内への車の流入を防ぐとともに、市内での公共交通機関の充実と低価格化をはかり車の絶対量を減らす努力が続けられている。
 また、自転車道の充実により安全な自転車による市内移動も確保されている。
 ゴミ処理への対応は象徴的でこの町には焼却型のゴミ処理施設は存在しない。
 広大な土地の下にあらかじめパイプを埋設しておき、その上にリサイクル不能なゴミを積み上げ、そのゴミから出る水分をそのパイプで回収し、浄化後20km上流の川へ戻すという方法がとられている。
 野積みにされたゴミの山は一見、日本の焼却灰より汚く乱雑に見えるが、実は一番安定した危険度の低い物質なのである。
 当然ながらゴミ自体を減らす努力も行われており、容器類のディポジット制(預り金制)はもちろんのこと、リサイクルできるものはコストがかかっても市の予算で徹底的に再生される。
 冷蔵庫やテレビ、果ては大昔の家具に至るまで考えられるあらゆる技術を使って再生なり再資源化が図られている。
 フライブルグ市で販売された電化製品にはステッカーが貼られ、処理にかかる費用を製品の購入時にディポジットするような方法をメーカーの協力で実施しているが、実際には他の町から持ち込まれたものでも市の予算で処理をしているようだ。
 このようにドイツ人気質ともいうべき環境保護政策が徹底的に取り入れられているが、見学した同市のリサイクルセンターの機械類は日本の同種のものに比べて技術的に遅れているように思えた。
 案内してくれた市の担当職員がドイツの環境システムと日本のゴミ処理技術が合体すれば、世界をゴミ問題から救えるかもしれないとコメントしていたことが印象的であった。

 

フランス、マルヌ・ヴァレ・ニュータウンの地方分権

 10月30日、フランスのマルヌ・ヴァレ・ニュータウンのBussy市を訪問した。
 現在、我が国においても最も重要な政策課題の一つ、地方分権を見聞するためである。
 まず最初にフランスの地方行政のシステムを説明すると、日本と同じように市町村議会、県議会が存在するが、それとは別に地方(地域)議会が存在し、いずれも直接選挙で任期6年の議員を有する。
 首長は各議会議員の互選によって選ばれるしくみであるので、首長の任期も必然的に6年となっている。
 ただし、決定的に日本と異なるのはそれら行政体の数である。
 市町村が約36,000、県が100、そして地方(地域)が22も存在する。
 これらは日本の明治時代の数とほぼ同数である。
 フランスではこれらの理由で地方分権が、我が国以上に求められているのかもしれない。
 さて、今回の訪問地Bussyはイールドフランス地方マルヌ県に属する町である。
 その位置はユーロディズニーランドのある町に隣接し、比較的パリに近い新興住宅地である。
 12年前に500人であった人口が現在では10,000人まで膨れ上がっている。
 現市長は7月に就任したばかりの31歳の若者でこの地域のダイナミズムを感じた。
 詳細は割愛するが、現在のフランス政府の地方に対する関与は我が国以上で、その上前述のように日本にはない地方(地域)という行政体が存在するため、その構造は外国人には理解不能なほど複雑である。
 教育を例に挙げれば、小学校は市町村、中学校は県、高等学校は国の管轄という具合である。
 フランスにおける地方分権は1982年から始まったが、これはドイツや他のヨーロッパ諸国に見られるような連邦制や道州制の導入ではなく、政府の活動自体を単純に地方に分散するという作業である。
 しかし、受け皿となる中小都市を構築しようとする際に傷害となるのが王権(旧体制)の問題であり、地方の独立性を著しく制限している。
 この現実は敗戦国である我が国とは決定的に違う部分である。
 この点に注目すると我が国の地方分権はフランスに比べれば推進しやすいのかもしれないという印象を持った。
 何れにしても世界の多くの国々で現体制下での行政制度に限界が来ていることは事実で、これをいち早く解決した国こそが21世紀の主役となり得るのかもしれない。
 Bussy市は日本の同規模の(類似した)町との姉妹提携を求めており、機会があれば市長に紹介したいと考えている。

 

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