- アマチュア無線家から見た、台風7号 -


『どんな台風だったのか?』

 台風が日本列島に向かっているとニュースが伝えている。
 どうせまた、どこかよそを通り温帯低気圧に変わるのだろうと心中では思う。
 22日、午後一時過ぎ電気の供給が一時止まるが、数分後に復帰。
 しかし、午後二時前に再度停電、どうせまたすぐに復旧するだろうとコンピュータのハードディスクのクラッシュの心配ばかりしていた。
 警報が出て学校が休みの子供達が怖がって、部屋にやってくる。
 あらためて風と雨の壮絶な音に気づく、、、、アンテナを風の影響を一番受けないであろう方向に気休めだとわかっていながら回す。
 従業員が次々やってきて、被害の状況を伝え始めた、、、、
 宿泊施設を持っている関係上、非常用電源で室内は一応は明るいが、火災警報機はあちらこちらで警報が出っ放しである。
 無我夢中で飛ばされた扉や飛びそうなものを雨と風の中でこれもまた気休め程度に固定する。
 二階のガラスが次々に割れる、、、そして窓自体が落下してくる!!
 どれくらいの時間が経過したのだろうか、、、疲労困憊、、気がつくとずぶぬれ、、、非常用電源も尽きて室内は薄暗く、先ほどまでとはまったく違う異様な静けさが周りをつつむ。
 タワーを見ると、、、、アンテナが一部ない、、、ワイヤー系のアンテナは庭に落ちている。あらためて、、、、、、がっくり!!
 冷静に高所から眺めると3ヶ所の屋根の棟がない、、、その他建物の被害多数、、、あらためて台風の怖さを思い知った。
 従業員を集め、怪我人がないか確認、、、、幸い皆、異常に興奮しているものの怪我はないようだ。
 それぞれに出来ることを指示して、部屋に戻り電波環境をチェックしてみる。
 すべての携帯電話の基地局は用意されていた蓄電池を使いきったのか、圏外表示もしくは動作がおかしい。
 加入電話は市内はかかるものの市外はだめなようだ。
 業務無線や災害用の周波数を傍受すると、ほとんどの周波数で被害状況や情報交換が行われている。
 情報を聞いていると他の町とは違う状況が見えてきた。それは倒木による被害がかなりをの部分をしめていることだ。
 50mもある木が倒れるとどうなるか、、、、想像を絶した破壊力に違いない。
 すぐに電気の供給が再開するだろうという期待とは裏腹に日没は訪れた。

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『停電の夜はご馳走』

 実は私自身も生まれてから、こんな長い停電を経験したことはない。
 数年前に訪れたモンゴルの暗さを思い出した。それは草原の暗さではなく、都市の暗さである。
 薄明かりだけの建物、車のヘッドライトのみが町の光源、、、、それらの雰囲気がよく似ているのである。
 子供達は電気で動いているものとそうでないものの区別が直感的に判断できないらしい。慣れるまで少し時間を要したようだ。
 実は電気が数時間以上止まると副産物として、家族の中で様々な行動が起こってくる。
 子供達はキャンプよろしくコールマンのランタンで結構楽しみはじめた。
 家内は妙にたくさんのご馳走を作り出したので尋ねると、冷凍庫の中の冷凍食品が意思に反して解凍をはじめてしまい、食べなければ腐ってしまうという状況に追いこまれた。
 すべてを食べてしまうことは到底無理だが、どうせ腐ってしまうのならいいものから食べようと盆と正月が一緒に来たような大晩餐会となってしまった。
 これが、地震などの大災害とは少し違い、情報がある程度入ってくるので、取りあえず電気が来ないという現実を克服することに没頭した結果である。
 キャンプ用ランタンの灯でお風呂にも入り、電話もファックスもe_mailも来ないゆっくりとした夜を過ごした。

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『電波環境はどうだったのか』

 昨年、完成したばかりの60MHzの行政防災無線は終始情報を送りつづけていた。
 その情報は深夜までおよび、住民にある種の安心感は与えたようだ。
 各事業所や役場の防災用無線機での通信は情報を得るというよりは個人的な興味を満足させてくれるだけのものだった。
 携帯電話各キャリアの基地局の非常用電源の許容時間は2時間程度のようで、すべての携帯電話の電波は午後4時までに止まっていた。
 通常は2時間以内に非常電源車で現場に駆けつけ、電源を供給する体制のようだが、今回のようにすべての道路が倒木で数十ヶ所も通れなくなるという想定はないようだ。
 同じことが加入電話にも起こるようで、停電して3、4時間は正常に通話ができていたが、まもなく市外通話は出来なくなった。
 バックアップ用の電源の消耗が原因ではないかもしれないが、深夜まで市外通話はできなかった。
 最終的に我が家に電気の供給が開始されたのは午前2時過ぎであったが、DoCoMoの携帯のみが午後11時頃から使用可能になった。
 電源の供給ルートが違ったのか、どのような方法をとったのか興味のあるところだ。
 余談だが、ISDNはTA/DSUに電源が必要なのでまったく使い物にならなかった。
 私はアナログ回線もあるのでバックアップ用のニッカド電池を装着していないが、入っていたとしたらどれくらいもったのかと興味を持った。
 宿泊施設の客室(約50回線)と外線を制御しているほんとに旧式のPBX(クロスバー式交換機)は思いのほか快調で、夜中まで鉛蓄電池で完璧に動作していた。
 我々、アマチュア無線家の反省としてはやはり24時間は動作するバックアップ電源を持ったレピータを用意できなかったことだ。
 1W程度に送信出力を落とせば、24時間動作させることは簡単なことだと、関係者と話し合った。
 移動式で簡単に設置できるレピータが災害時だけでも免許されるなら、災害時に有益にアマチュアバンドを活用できるのにと、通話が困難な業務無線(行政の)を傍受していて切実に感じた。
 尚、高野山のレピータサイトの被害状況を代表者のJR3TPSが道なき道を登山し確認したところ、奇跡的に(本当に奇跡的に)二つの局舎とも倒木の直撃は免れたとのことであった。
 しかし、局舎内には倒木を撤去しない限り、進入できないため内部の機器の状態は確認できていない。
 関西電力によるとこのルートの復旧の目処はたっていないとのことなので、当分運用を再開できない状態である。
 代表者は数十本の杉や檜の大木が根っこから倒れており、通いなれたはずのサイトへの道を見つけられないほどであったと伝えてきた。


 現在、以下のものが運用を停止している。

           JR3WY           (高野山レピータ 2波)
           JP3YEG          (高野山計画レピータ 1波)
           JH3GAH−#  (NET/ROM Node 4ports)
           JK3YGW        (PacketCluster Node 3ports)

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『余計なことですが、、、』

 過疎化にあえぐ地方にあってこんなことを考えた。
 本当か嘘か知らないけれど、かのニューヨーク大停電があった十ヶ月後にたくさんの赤ちゃんが生まれたらしい、、、、
 もしそれが本当なら、一年に一度ぐらいは停電にしていただいて過疎化少子化対策の一助にならないかな、、、などと不謹慎にもまじめに考えた。
 何、「子供を産める若者がすでにいないのだ!」との声も聞こえてきそうだが、いろいろなことを考え、忘れた頃の災害の恐ろしさを思い出させてくれた台風七号であった。

 

注) 24日現在も町内で停電している地域が数ヶ所もあり、南海電鉄高
野線のケーブルカーの復旧の目処はたっていないとの情報である。

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報道写真

                              

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